パワハラの正体とは その1

VOL.1

 

〈パワハラはコンプライアンスの重要課題である〉

 

今、職場で起きているパワハラ問題が深刻化しています。

民事上の個別労働紛争の相談件数は2012年から

8年連続パワハラがトップを維持していて、

2016年の厚生労働省の調査は、職場の相談窓口に寄せられ

ている相談もパワハラが最も多い結果になっています。

 

2019年の精神障害における労災認定件数のトップは、

「(いじめ)嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けた」が最も多く、

パワハラが原因とみられる自殺も後を絶ちません。

 

働く人の悩み、労働相談、不祥事の代表といえば、

「パワーハラスメント」と言える状況になっています。

そういった状況に歯止めをかけるため、2020年6月1日、

いわゆるパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が

施行となり、2022年4月1日からいよいよ中小企業へも

適用される運びとなりました。

 

企業や官公庁等でハラスメント防止の支援を長く続けてきた

私は、「ようやくここまで来たか」という思いで、

この流れを見ながら、2018年の『パワハラをなくす教科書』(方丈社)に

続いて、昨年、『最新パワハラ対策完全ガイド』(同)を刊行し、

パワハラ防止法を踏まえた実効性のあるパワハラ対策の提案を

全国の講演会や企業研修等で行ってまいりました。

 

 

〈パワハラ対策はすべての問題を解決する〉

 

企業がパワハラ対策の取り組みを強化することで、

さまざまな効果が表れる興味深いデータをご紹介します。

以下の図は、パワハラ実態調査(厚生労働省2016年)の

「パワハラの予防・解決のための取り組みを進めた結果、

パワハラの予防・解決以外に得られた効果」についてです。

 

これらの効果は、取り組み期間が長いほど、

大きくなる傾向があることも分かっています。

 

パワハラ対策というと、どうしても「あれをしてはいけない」

「これに気をつけなければならない」といった後ろ向き

対策のイメージがつきまといがちです。

しかし、パワハラ対策とは、働く人が健康で安心して

働ける職場づくりを推進することであり、個人を尊重し

多様性を受け入れる価値観を形成することであり、

変化に強く活力のある組織づくりに直結します。

 

パワハラ対策は職場のすべての問題を解決する

―そう言っても決して過言ではないのです。