パワハラの正体とは その2

VOL.2

〈パワハラは未解決問題の象徴〉

 

厚生労働省は、パワハラを

①身体的攻撃 ② 精神的攻撃 ③ 人間関係からの切り離し

④ 過大な要求 ⑤ 過小な要求 ⑥ 個の侵害

の6つに分類していますが、これら6つの類型は、突き詰めていけば、

その奥にある本当の問題が見えてきます。

 

●法律の問題

例えば、①身体的攻撃と②精神的攻撃は、法律問題です。

①は暴行すれば暴行罪、怪我をさせたら傷害罪に、

②は、脅迫や名誉棄損、侮辱などに問われることになります。

不当解雇や退職の強要があれば、労働法に抵触します。

 

パワハラ防止法が施行となり、企業はブラック企業のレッテルを

貼られないよう法令遵守の意識を高めていますので、

法律問題を背景としたパワハラは減少するでしょう。

 

●コミュニケーションの問題

③の人間関係からの切り離しと、⑥の個の侵害は、

コミュニケーション問題です。コミュニケーションの

質と量が適切でないと起こりやすくなります。

 

ストレス社会といわれるなか、職場にゆとりがなくなり、

上司は部下の話をじっくり聴くことが困難になっています。

テクノロジーが進化し、インターネットコミュニケーションに

依存しているデジタルネイティブの部下は、対面における

「伝える力」が低下しています。

 

部下の発信と上司の受信が噛み合わない状況が続くことで、

今後、コミュニケーション問題を背景としたパワハラは

増加すると考えられます。

 

●マネジメントの問題

④過大な要求と⑤過小な要求は、マネジメント問題です。

適切な指導が行われていないために生じているものです。

新型コロナウイルス感染症対策によって、テレワークという

働き方が一般化する動きを見せるなか、働き方の変化に合わせ、

マネジメントにも変化が求められています。

 

性善説で、「自宅でも部下はしっかり仕事をしてくれて

いるはずだ」と信じることは大切です。しかし、

テレワーカーに合った進捗管理とサポートをしなければ

期待通りの成果は上がりません。

 

一方、性悪説で、「部下は自宅でさぼっているに違いない」

と監視を強めるのは、ストレスやモチベーションの観点から

望ましくなく、パワハラリスクを高めます。

 

多様な働き方へのマネジメントに慣れていない上司が

多いことを踏まえると、マネジメント問題を背景とした

パワハラも増えると考えておくべきです。

 

パワハラは、禁止しなくてはなりません。しかし、

「言葉遣いに気をつけるように注意する」だけでは

防止できません。「パワハラ行為者を処分する」という

表面的な対応では再発も防ぐことはできません。

 

なぜなら、パワハラは、法律問題、上司と部下の

関係性の問題、マネジメントの問題、さらには、

組織の運営方針・慣習の問題等が複合して起こるからです。

組織に内在する本質的な問題を把握し、改善することが必要です。

 

まずは、パワハラが、どんな具体的な問題から起きたのかを

理解し、当事者の抱えている問題、コミュニケーションの問題、

マネジメントの問題などを点検します。

点検のプロセスでは、しばしば、組織の非効率な運営方針や、

職場の不合理な慣習も浮かび上がります。

 

言い換えるなら、パワハラ問題には、組織の非効率を

効率化していくヒントが多く隠されているのです。

2022/2/2