パワハラの正体とは その3

VOL.3

〈法律ではパワハラは減らせない〉

 

厚生労働省のパワハラ実態調査で、

「過去3 年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員」は、

2012年が25.3%だったのに対し、4年後の

2016年には32.5%に増加しています。

パワハラが問題視され、これまで各企業が

さまざまな取り組みを始めているにもかかわらず、

パワハラの件数は増えています。

 

パワハラ防止法施行後もその状況は続くと私は考えています。

パワハラの法制化は、違法行為、不当行為などの

明らかなパワハラ行為(本当のパワハラ)を減らす効果がある一方で、

曖昧で主観的なパワハラ(感じるパワハラ)を増やすリスクがあるからです。

 

パワーハラスメントとは、「職場において行われる

優越的な関係を背景とした言動であって、

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

その雇用する労働者の就業環境が害されること」と

パワハラ防止法で定義されました。

 

「業務上必要かつ相当な範囲」の判断においては、

付帯決議で「労働者の主観」にも配慮する必要がある

と記されています。つまり、何が起こったかの客観的事実と

被害者がどう感じたかの主観的事実を踏まえて判断が必要ということです。

 

ハラスメント問題の本質は主観です。

自分はパワハラをしていないという確信があっても、

相手がパワハラを受けたと感じればパワハラに

なることがあることを肝に銘じておくべきです。

 

 

〈パワハラは1人では解決できない〉

 

よくある事例を紹介します。

上司は、部下への行き過ぎた行為を「指導」と認識しているため、

パワハラ行為を続けてしまうことがよくあります。

パワハラを受けたと感じている部下は、よりパワーのある上司に

「やめてください」とは言えません。「職場には相談しにくい」

という人も多いため、人事部がパワハラに気づいたときには

深刻化しているケースが少なくありません。

 

パワハラは1 人で解決することはできません。

パワハラ対策は、職場最大のプロジェクトとして位置づけ、

当事者意識の形成と健全な行動を起こしやすい職場環境づくりに

取り組むことで実効性が高まります。

 

ぜひ、パワハラ対策を前向きにとらえてアップデートを図り、

組織の活性化や健康な経営に結びつけてください。

 

2022/2/21