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- 「本当のパワハラ」と「感じるパワハラ」 その2
VOL.5
〈パワハラの意味をとらえる〉
職場で起こるパワハラという事象の「事実」だけに焦点を当てる上司は、
部下の「これって、パワハラじゃないですか?」という評価に対して、
「それは、パワハラではない。なぜなら……」と
理屈で押し切るようになります。
たしかに事実はパワハラではないかもしれません。
しかし、人間関係において、正しいことを言っても良い結果は得られません。
「パワハラではない」と言う上司の正論は、その出来事によって生じた
部下の考え、気持ち、欲求などをすべて切り捨てることになります。
すると、部下は全否定されたと感じ、自尊心が傷つき、
上司とのコミュニケーションを避けるようになります。
パワハラは姿を変え続けています。
平成から令和のパワハラは、職場で起こるさまざまな問題を吸収し、
そこで働く人の多様な主観が関与しながら、抽象度を高めています。
パワハラを否定するのではなく、「〇〇さんは、パワハラと感じたんだね」と、
ひとまず受け止め、部下が直面した出来事、考え、気持ち、欲求などを問いかけ、
部下が本当に伝えたいこと、その意味を明らかにしていきます。
変わりゆく時代のなか、人々の受け止め方の変化をとらえ、
法令や判例、労働条件などの情報だけでなく、自分の感覚も
アップデートすることが重要です。
〈「人間」ではなく「関係」をマネジメントする〉
私たちが対人関係を結ぶとき、必ず相手に対し
何らかの期待を抱いています。これを「役割期待」といいます。
上司は部下に対して、「部下」という役割を期待します。
例えば、この上司が「報告・連絡・相談」を最も重視して
仕事をし、その結果として、管理職になったとします。
すると、部下に対しても無意識のうちに「報告・連絡・相談」を
最も大事にするのがあるべき姿だと考え、部下からの
報告や相談が遅れると大きなストレスを感じます。
このように上司の期待と部下の現実の行動にズレが生じると
パワハラが起こりやすくなります。
このような役割期待のズレを解消するには、
①自分が相手に対してどんな役割期待を抱いているのか
②相手への役割期待が適切かどうか
③役割期待を相手に正確に伝えているか
の3 点を点検し、問題のある部分を改善します。
管理職には、さまざまなマネジメント能力が求められます。
役割期待のズレを解消するということは、
部下という「人間」をマネジメントするのではなく、
部下との「関係」をマネジメントする、ということです。
パワハラは関係性と感情の問題です。関係のマネジメントは、
お互いの感情に良い影響を与えます。心理的安全性も高まり、
職場にはびこるパワハラ(感じるパワハラ)を減らすことが
できるでしょう。
2022/3/21