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- パワハラリスクをセルフチェックする その2
VOL.7
〈自分のパワハラリスクを知る〉
前回はチェックリストでご自身について振り返っていただきました。
今回は、なぜそれぞれの項目が内在するリスクになるのか、1つひとつ、見ていきましょう。
仕事に対して、「こうあるべきだ」と考える傾向があるにチェックが入った人は、仕事に対する自分の理想が高いことを示しています。しかし、現実には理想通りにいかないことが多いため、「なぜ、できないの?」「しっかりやれよ!」と部下を責めることになりがちです。「〇〇すべき」「〇〇すべきではない」という思考が強すぎると怒りの感情が出やすくなります。
物事を白か黒かはっきりさせるほうであるにチェックが入った人は、「白黒思考」の人です。完璧にできなければすべてがダメだとか、少しでも意見が違うと「自分を否定している」と受け取ってしまう特徴があります。しかし、物事はそう簡単に二分できるものではありません。ましてや人の気持ちなど、曖昧でどっちつかずのことのほうが多いものです。どちらかはっきりさせるという思考は、はっきりさせられない問題に対して苛立ちを感じやすくなります。
プライドが高いほうであるにチェックが入った人は、自分側からしか相手のことを見ない傾向があります。「自分が正しい」と信じているので、相手の立場に立ったものの見方ができません。「それは、パワハラではない!」と自分の評価を一方的に相手に伝えるだけで終わってしまいます。プライドの高い人は、自己肯定感の低い人が多く、自信のなさを隠すために相手をマウンティングする傾向があります。
他の人より実績を残したという自負があるにチェックが入った人は、「自分のやり方が正しい」と思う傾向があります。しかも、「他人と比べて私のほうが」という思いがあり、自分と違うやり方をする人を認めないことがあります。「過去の成功体験にとらわれる」というタイプです。
自分の思っていることや気持ちを表現しないで我慢することが多いにチェックが入った人は、ストレスを溜め込みやすいタイプです。周囲からは真面目で協調性があるように見えて評価されます。ただ、気持ちは抑圧すればするほど、フラストレーションが溜まって、何かの拍子にドッと表に噴き出すことがあります。
「失敗するな!」「なぜ、できないの?」という否定的な表現をよく使うにチェックが入った人は、要注意です。「失敗するな!」は、失敗したら責任を取らすぞというふうにも受け止められますので、不安を感じやすい人を萎縮させます。「なぜ、できないの?」という表現は相手を追い込みます。変えられない過去のことを追求されると、思考停止状態になりやすく、自分の行動を冷静に振り返ることができなくなります。そもそも、できていない人に、
「なぜ、できないの?」と聞いても答えられません。理由が分かっていたら行動しているからです。
人の気持ちより、正しいかどうかの理屈のほうが大切だと思うにチェックが入った人は、人の気持ちを配慮しないで正論を振りかざす人で「ロジハラ」ともいいます。対人関係は正しいことを伝えても必ずしもうまくいきません。正論が通じないのは、相手の感情への対応ができていないからです。何が正しいことか、多くの人は知っているものです。知ってはいるけれどもできない。そこに、その人が抱えている問題や事情、悩みがあるのです。
正当な理由があればパワハラ行為をしても仕方がないと思うにチェックをする人は、実はとても多くいます。パワハラ行為者の多くは、「会社の方針のため」「成果のため」「指導のため」といった理由で、自分の行為は、多少行き過ぎはあったかもしれないが、問題はなかったと主張します。しかし、パワハラは不当行為であるため、目的に妥当性があっても、手段は正当化されません。
仕事は結果がすべてだと思うにチェックをする人も多くいます。この考え方はビジネスの世界では根強いようです。しかし、「仕事は結果がすべて」という考え方は、「結果さえ出せば何をしてもいい」という解釈につながりかねません。繰り返される企業の不祥事も、この結果至上主義というべき考え方を背景にして起こっていると考えられます。
睡眠に何らかの問題を抱えているにチェックが入った人は、ストレス、疲労を抱えていて、感情の制御機能も低くなっています。睡眠負債が溜まると、脳の前頭前野(思考中枢)が機能低下し、扁桃体(感情中枢)が過剰に反応します。感情のアクセル全開で理性のブレーキが効かなくなります。感情の制御機能が低下するとパワハラリスクを高めてしまいます。
〈1 つでも改善することが大切〉
いかがでしたでしょうか。
これら10の項目で該当するものが多ければ多いほど、
ストレスを抱えやすくなります。高ストレス状態になると、
自分の思考や行動に偏っている部分がある人は、
その偏りが次第に強まり、それぞれが刺激し合い、感情と行動の
制御機能が低下して、パワハラを起こしやすくなります。
今回は、セルフチェックを中心に解説しましたが、
10項目の具体的な改善方法について詳しく知りたい人は、
拙著『最新パワハラ対策完全ガイド』をご一読いただければ、
行動変容のヒントが得られると思います。
チェックが入った項目のうち、「これは、変えていけるかも」と
思うものがあったら、1~ 2 つ変えることができれば、
それぞれが刺激し合う度合いが弱まります。
リスクをゼロにすることを考えるのではなく、
バランスのとれたものにしていくことを考えてください。
2022/4/21